ある12月31日の出来事。
世間では新年を迎えるムードが漂い、テレビはどのチャンネルも年末の特番で盛り上がっている。その中で私たちは、紅白歌合戦の前半だけ見るようにしている。
子どもたちが好きなアーティストが出るからだ。
こたつに入って、みかんを食べながら。
典型的な日本の年末の過ごし方だ。
そんな中、前日から預かっている保護犬くんがまだ排泄していないことに気づく。
彼は、家の外で排泄するのがお望みだ。
時間は夜の22時。
妻は、年越しそばの準備をしている。
私が行くしかない!
リードを付けて、ガラガラと家の扉を開ける。
空気が澄んでいるので、星がとてもきれいに輝いている。
イヤ、そんな悠長なことを言ってる場合ではない。
とにかく寒い。ちなみに三田市は兵庫のシベリアと呼ばれている。
誰が言ったのか、そう思うと余計に寒く感じる、ほんとに迷惑だ。
近くの空き地について、散歩をしながら排泄を待つ。待つ。待つ。・・・・
「ゴーン ゴーン ゴーン」 まさか除夜の鐘?
携帯の時間を見ると、1月1日 0:02 💦
なんと、私は彼と真っ暗な空き地で、新年を迎えたのだ。
散歩に出て2時間半ようやく排泄が終わり、家路につく。
前説が長くなったが、ここからが重要。2時間半の間、私は何を考えていたのかだ。
早く排泄をして欲しいと考えるとイライラするかもしれない。
そこで私は「発想の転換」をした。
彼をとことん観察することにした。
どこで立ち止まるのか。どこを見ているのか。どの道を歩くのか。どんな時にしっぽを振るのか。
よく見ていると、立ち止まって遠くを見ている時何もしていないと思っていたが、ある部分だけ忙しく動いている。
鼻だ。同じリズムでその黒い物体は動いている。確かに匂いを嗅いでる。
よく見ると、その黒い物体は、散歩している間休まず動いている。
彼には、感じる匂い。何とかして私にも感じたい。大きく鼻で深呼吸する。
その時、冷えた空気の中でかすかに感じた。勘違いか?いや確かに感じた。
「微かな冬の香り」湿った土のにおい。凍てついた植物のにおい。乾いた木の幹のにおい。
なぜか、50歳の私がわくわくしている。
歳を取るにつれて、新鮮な経験はなかなかできない。
だけど、正直言って彼との2時間半は、とっても楽しかった。
久しぶりに心がエンタメされた。
そう。わんことの共同生活で一番大切なことは、
「発想の転換」
なのだ。 そう気づかせたくれた日だった。
ありがとう。熊吉
。
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